拍手御礼小説 「蝶」

運命40話付近。黒キラ注意。


 

「おかえり」



 身体中包帯だらけでベッドに横たわり、青白い腕に点滴の針がささっている。
 吐息は苦しげに乱れ、意識は未だに戻らない。
 汗に張り付いた前髪をかきあげてやりながら、そっと、囁いた。








 信じていたよ。
 君はきっと戻ってくると。



 僕は知っている。
 君の居場所はここしかないのだと。



 そして君も知ってるはずなのに。
 何故かな。 
 時々抗ってみたりする。





 無自覚に気まぐれに、僕は翻弄する。





 結局帰ってくるくせに、突然離れてみたり。
 自分が誰より傷つくくせに、僕を傷つけてみたり。
 生きるために、死地に赴いてみたりして。







 逃げて逃げて、そして逃げて……。
 逃げ切れなかったことに安堵する。

 君は今、ここにいる。
 僕の隣。
 逃げ切れずに。



 

 なんだかそろそろ飽きてきてしまったんだ。


 追いかけるのも。
 逃がしてやるのも。
 僕の要らないところで、君が僕のものを勝手に傷つけて帰ってくるのも。

 その手も足も、その目もその鼻も、その口もその耳もその髪も、内臓も、全部僕のものなのに。
 勝手のボロボロにして。




 だからさ。
 もうそろそろ終わりにしようか。









 ねぇ、アスラン――――。




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