小話1:アスキラ同棲戦後


「キラっ!」

 帰ってくるなり抱きついてきた同居人を……。
 少年は無情にも、よけた。
 よけて更に追い討ちまでかける。
 目標を失った彼の背中を蹴って。

「うわあっ」

 ――ゴンっ。


 コーディネーターの身体能力は良いのではなかったか。
 それとも傷心のあまりとでもほざくのだろうが。
 ……いつものことなのに。
 踏みつけられるように床と対面した彼は、しばし動かない。
 些か大げさだと、後悔も何もなくキラは思った。

 それにしてもいい音がした。
 打ったのは額だろうか。


「アスラン」

 呼んでも返事がない。
 ピクリとも動かない。
 まさか彼に限って気を失っただとかそんなはずもあるわけがなく――あったらここぞとばかりに笑ってやろうと構えているのだが、残念ながらいまだかつてそんなことはない――一番近いので一種のあてつけだろう。

 仕方なくキラも囁いてみる。
 邪魔でしょうがない。


「アスラン、そこどいて。踏むよ?」

 まだ返事はない。
 さらに言い募った。

「故意に」




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(一言)
短い。でも意外に楽しかったとかいう……。