バシッと何か――壁だと思われる――を強く叩く音がして、アスランが振り向けば、それを確かめる前に黒い塊に襲われた。 とっさのことに対応がおくれ反射的に手は伸びたのだが、しかしベッドに突き倒される形となった。 「……キラ?」 「アスランの、アスランのっ…………裏切り者!」 「えっと、……キラ?」 「裏切り者っ裏切り者っ! まさか浮気するなんてっっ!」 「な、何の話だよ、それ」 「信じてたのに」 「ちょっと待て。見に覚えがない話だぞ」 「やっぱり君は女の子のほうがいいんだね。女の子ってやわらかいし可愛いし、いい匂いして気持ちよくて……。男とか抱いても硬くて痛くて気持ちよくなくて、子供だってできなくて。そうだよね、女の子のほうがいいよね。当然だよね」 「いやキラだって十分気持ちいいと思うけど。じゃなくて。だから何の話だよ。俺は浮気なんてしてないからな」 「でもそれならそうとちゃんと言ってくれればよかったのに。綺麗な別れ方はしてあげれなかったかもしれないけど……。でも君が女の子のほうがいいって言うなら」 「だから聞けって、キラ!!」 「アスランの馬鹿」 「俺が一体何したっていうんだよ」 「浮気」 「だからしてないってば。どこからそんな話が湧いてでてきたんだって」 「白々しい」 「キラっ!」 「浮気なんてしてないだって? 証拠だってあるのに」 「証拠? 見せてみろよ」 「これ」 「新聞?」 「ここ。読んで」 「ザフトの英雄アスラン・ザラ、熱………………熱愛発覚ぅ!? なんだよこれ!?? お相手はオーブの姫君。………って、カガリかっ!?」 「まさか僕の姉さんに手をだすなんて。君実は顔が同じなら誰でもいいんでしょ」 「顔が同じって条件つくなら誰でもいいってわけにはならない。って、そんなことを言ってる場合じゃなくて。……何、これ」 「写真まであるのに、まだ白を切る気? 往生際が悪いよ、アスラン」 「これはっ」 「カガリの肩抱いて? しかも横に映ってるのホテルだよね。一体オーブに何しにいくのかと思ってたら。政治の話じゃなかったんだね。君にはがっかりだよ、アスラン」 「勝手に話を進めるな。誤解だ、キラ。俺がホテルに行ったのはカガリに呼ばれてであって、別にカガリと一緒に行ったわけでは」 「言い訳になってないよ、ぜんっぜん!」 「だからだな、呼ばれたのに他意は全くなくて」 「だったらなんだって言うんだよ」 「嫌な……ことでもあったのか、あいつ際限なく飲んだらしくて。カガリが酔っ払って電話してきて、何かと思って駆けつけてみたら酒に付き合えといわれて」 「そこで襲っちゃったわけだ」 「違う! さすがにこれ以上飲ますのはまずいと思ってホテルから引き上げたんだよ。俺が泊まりこむわけにはいかないし、かといって一人にしたら飲むだろうしっ」 「それ……何もなかったって証明にはならないよね」 「キラ…………。だいたい俺がカガリに恋愛感情もなにも持ってないって知ってるだろ」 「でもむらっときちゃったりして」 「ならない!」 「同じ顔だし」 「だからといって、カガリはキラじゃないだろ。俺が好きなのはキラなんだ。キラの顔とかキラの何、とかじゃなくて。キラの全部が好きで、全部がキラだから好きなんだ」 「それで?」 「お前、俺のこと信用してないの?」 「してない」 「……………………………………。なんだよ、それはっ!」 「逆ギレ?」 「うるさい。信用してないって……。しかも即答で。ずっとそう思ってたのか? 俺が浮気するような奴だって、そう思ってたっていうのかよ」 「あたり前だろ」 「ってことはあれか、キラ。俺はあれだけお前が好きだとさんっざん言ってきたと思うが、少しも信じてもらっていなかったと?」 「好きっていうのは信じてるよ」 「お前さ、お前のほうなんじゃないのか。女の子のほう可愛いとかなんだとか思ってるのは。だからそんなに不安に思って疑心暗鬼になれるんだろ」 「そりゃあ思ってるさ。だって女の子は可愛いだろ。ふわふわしてて、ラクスなんかと一緒にいるとすごく幸せな気分になれるんだ。ふらふら〜っといきたくなるってもんだろ」 「キラ…………ちょっと俺たちには話し合いが必要だと思わないか?」 「思わない」 「キラはなんで俺と付き合ってるの?」 「アスランが好きだから」 「ホントに好きって態度なのかよ、それが」 「なっ……。なんてこと言うんだよ、君は。だいたい好きじゃなかったら抱かせたりしないよ。あんなに痛いのに。君だから、君だったから僕は、我慢したのに。そこから疑うの?」 「あ〜。…………ごめん」 「それは何に対してのごめん!?」 「色々。不安に、させたことも含めて」 「う〜〜〜〜〜。好き、なんだよ。本当に好きなんだよ?」 「はいはい。本当に悪かったよ。不安だったんだよな、寂しかったんだよな、俺がしばらくいなくて。いない時に不安助長するようなニュース見て。 ごめんな、気付くの遅くなって」 「アスラン」 「別に本気で言ってたわけじゃないだろ。不安でぐちゃぐちゃになって、それでわけがわからなくなって言ってただけで」 「……………………女の子は本当に可愛いと思うけどね」 「……きぃらぁあ」 back (一言) キラにはぜひとも女の子大好きでいてもらいたい。 |