「アスラン、散歩にいこうか」 ポツン、と言われた。 何気ない様子で。 ずっと黙って外をみていたと思っていたら、突然これだ。 いや、散歩自体は別に反対する気はないし――何もない状態だったなら――いつもの突拍子もない思い付きに比べればとてもまとも、というかとてもまともなものではあったけど。 けれど何で今言うかなあ。 俺が何してるか本当にわかっているのだろうか。 俺はいま、他でもないキラのために、こんなにも頑張っているというのに。 なのに、だ。 キラは言う。 「だって暇なんだもん」 全く悪びれない様子で。 怒って、いいよな? ここは怒ってしかるべきだよな。 「キラ、お前なあ」 「アスランも疲れたでしょ?休憩ってことで」 悪びれないどころじゃなかった。 こいつは一体俺をなんだと思ってるんだ? 便利な幼馴染み以下の扱いだろ、これは。 召し使いとかパシりとか下僕とか下僕とか下僕とか下僕とか下僕とか。 自分で言ってて悲しくなってきた。 絶対に恋人に対する態度でだけはない。 「俺が今何してるかわかってる?」 そんな時間はないのだと、そんな余裕がどこにあるのだと、言うがキラは首を傾げて、笑った。 「アスランが今? 僕のアスランによる僕のための課題の修復」 ああ、キラ。 その『僕の』はどこにかかるんだ? 『アスラン』なのか、それとも『課題』なのか? …………まあどうでもいいけど。 「キラぁ。どうしてお前はそうなんだ」 「だって暇なんだ」 ……どうして俺が不服そうに文句たれられなきゃならないんだ。 キラなんだぞ? 明日提出の課題を気持良くも壊してくれたのは。 せっかく珍しく提出日前に終わったのに。 それを洗うヤツがいるかよ。 抜けてる以上だろ。 泣き付かれて全部やってやってる俺も俺なんだけど。 その俺に「だって暇なんだ」だあ? いくら俺でも放り投げるぞ。 しかもキラは俺がここでやめてもいいって言うのかよ。 先生に怒られてもいいのか? 可愛そうだと思った俺が馬鹿らしいよ。 「アスラン? 怒ったの?」 顔をのぞき込んできたキラに溜め息をつく。 「いや」 キラの泣きそうな顔にはとことん弱い。 情けないけど、泣いたキラの相手をするのはすごく大変なんだ。 課題がどうしたとかもうそんなことは言ってられなくなる。 「ほんと?」 「本当。だけどお願いだから、しばらくおとなしくしてて」 「……うそつき。怒ってる」 そんなに不安そうに聞いてくるっていうことは俺が怒るようなことをしたって自覚がるってことだよな? まったくもう、溜め息を禁じない。 「怒ってないよ。ほら、手離して? なるべく早く終らせるよう頑張るから」 袖をつかんできた手を指摘すると、キラは傷ついた顔をして目を背けた。 手をはなしてくれる気配はない。 まったく、課題が完成しなくてもいいのかよ。 「キラ?」 「アスランの意地悪」 なんで、そうなるのかなあ。 「暇。つまんない。構って、アスラン」 「……課題は?」 それはとても魅力的なお誘いだけど。 「…………いい」 「怒られるのキラだよ?」 「………いい」 「キラ」 こぼれた髪をかきあげて頬を撫であげてやるば、キラは気持よさそうに目を細めた。 相当に暇だったらしい。 それなら自分でするとか、もしくは一人でゲームするとか。 ……そりゃあ少しは腹が立つかもしれないけど。 それでもどうせ邪魔されるんだったら、むしろおとなしく一人で遊んでいて欲しかったよ。 それをやらないのがキラなんだけどさ。 でも、なあ。 「もうちょっとだから、キラ」 「やだ」 「やだって……」 「いや。ね、アスラン?」 遊んで、と。 ああもう。 どうしろっていうんだよ。 だいたいこんな顔されて……。 「キラ、いいかげんにしないと。遊ぶよ?」 その気にならないほうがどうかしてる。 「ほんと? やった。遊ぼう」 意味、わかってないだろ。 「俺が遊ぶの」 「うん。だから僕で、でしょ?」 …………。 なんてゆーか。 ああもう、負けたよ、キラ。 完敗。 課題は、……夜、だなあ。 今日は泊まり決定。 徹夜にならなきゃあいいんだけど。 いろいろと、厳しそうだなあ、とか。 back (一言) タイトルは……タイトルじゃなくて、別に……タイトルじゃなくて…………。 お題だとでも思ってください(痛) |