「……あっ」 「やぁっ」 「…………ん、ぁ……っ」 「やだ、アスラン」 「やめっ」 「あっ、ああぁっ」 ――――――――チュッドーンッ 「…………………………」 呆然と、どうにもこうにもなくただ呆然とアスランは目の前の光景を見た。 それ以外できることはなく。 その目の前の画面には、Winnerの輝く文字が点滅する。 「よっし、勝った!」 横でキラが満面の笑みでガッツポーズなど決めてくださるが……。 「勝った……って。…………勝ったって、お前なっ! なんなんだ、今のはっ!!」 「ええ? 新しい裏技?」 首をかしげて上目遣いで言わないで欲しいと思う。 特に今は。 即物的な男の性にいっそう泣けてくる。 かろうじて今はそれよりも戸惑いの方が大きく、何をしようとも思えない……否、その衝動は抑えられているが。 「『裏技?』って……。誰だ、誰に吹き込まれた」 「吹き込まれたってそんな人聞きが悪いなあ。ムウさんだよ」 ムウ・ラ・フラガ。 ノリの軽い隣人は、たった今をもってアスランのブラックリストにノミネートされた。 「でもホントに勝てるとは思わなかったな〜」 キラはそんなアスランの様子に気付いているのかいないのか。 たぶん気付いていないだろう。 久方ぶりの勝利に酔いしれている。 「そんなので勝って、うれしい?」 「どんなので勝ったって勝ちは勝ちだもん。うれしいよ?」 「ああ、そう」 のほほんと言い放つキラにどうしてくれようかとアスランは思う。 あんなのは反則だ。 あんな……。 あんな声を…………っ! さすがにベッドの中とは少し違うところが役者になりきれない幼馴染なのだが。 それにしてもアスラン自身への攻撃力はすさまじかった。 なまじいつもは抑えようとしているそれであるからして、…………すさまじかった。 もうそれ以外表現のしようがない。 「んじゃ、何してもらおっかなあ」 「キラ?」 「うん?」 「何それ」 『何してもらおうか』とはどういうことなのか。 そんな話は聞いていない。 「負けた人は勝った人の言うこと一個きいてね」 そんな話は、聞いていない。 しかもアスランが勝ったときにそんなことしたことはない。 「いつ決まったんだよ、それ」 「今」 やってられるかと思った。 そう言おうともした。 だが、思いとどまったのは、キラの我が侭ぐらいきいてやろうとかそんなことを思ったわけではない。 だいたいキラの我が侭なんて、こんなことをしなくても日々きいてやっている。 今さら、なのだ。 だから思ったのはキラのためではなく、自分のためで。 次は、勝つ。 絶対に勝つ。 心に決めた。 「…………何しろって?」 「そうだね〜」 少し、いやな予感を覚えた。 これは、我が侭だとかそういったものではなく、他の何か――それが何かはわからなかったけれど――かもしれないと。 「アスラン、一緒に寝よ?」 だが実際に言われた言葉は、確かに我が侭とは違うものだったけれど、でも感じたそれとはどこか違った。 「…………それだけ?」 だから聞き返した。 それだけならばきくのはやぶさかではない。 と、いうか。 願ったりかなったりだ、むしろ。 だがしかし。 そううまくいくのは人生ではなく。 「でも今日はなしね」 何が、とは言わない。 何がとはきかない。 あきらかに示されたその言葉は………。 ただアスランに決意を硬くさせた。 地獄か天国か。 地獄か、地獄か。 要は、悪魔だ。 back (一言) キラが天然すぎました(反省) |