おまけ1 「ところでキラ、なんで扇風機なんだ?」 「ああ、だってさ、かき氷だよ?」 「……ごめん。わからない」 「だからさあ、カキ氷機ってきたら扇風機でしょ。なんかクーラーだと情緒なくなる気がしない?」 「…………それだけのためにあんなにぐったりしてたと?」 「……まあそうなんだけどね。いや実際僕もあそこまでしんどいとは思わなかった。でも一回やりはじめたら後には引けないでしょ」 「お前ね。やっぱり変なところで頑固だな」 |
おまけ2 「ねえアスラン」 くるっとキラがスプーンをまわしたのを見て、ああと頷いた。 すっと手をだすと、はいっと空になったお皿を渡される。 「食べだすと止まんなくなるよね〜。……じゃなくてっ」 親切心からした行動なのに、というかキラも普通に差し出してきたくせに、何故か睨まれた。 理不尽にも。 「いらないのか?」 「いるけど。いるけどそうじゃなくて」 「だからいるんだろ?」 「うんまあそうだね。でもだから僕が言いたかったのはそれと違って」 アスランが微かに笑うと、キラはう〜と唸ってテーブルに突っ伏した。 「だから違って」 「じゃあ何?」 おかわりといわれた分を差し出すと、キラは有難うと言って受け取ったが、だがまだすっきりしない顔でいた。 下から上目遣いで見られると、いろいろと不都合が生じるのでやめてほしい――けどやってほしい。アスラン・ザラ、微妙なお年頃。 「扇風機とね、カキ氷機とね、せっかくここまでそろったんだからさ、買い物いかない? って」 「今から?」 「そ。だって日も落ちちゃったし、やっと外に出れそうだよ」 「ってゆーか何を?」 「ん〜? 風鈴とかね」 さっき夏といえばで一例としてあげた風鈴は、思った以上にキラの心に響いたらしい。 「あとよしずとかさ」 「簾とか?」 「扇子とか。あ、うちわでもいいなあ」 今年のテーマはどうやらアジアになりそうだった。 「それからね、蚊取り線香」 楽しそうにあげられたそれは……、どうにもしっくりこなかった。 いや、キラが楽しいのならそれでよいけれど。 けど、自分も楽しければもっといいなと思って、ふと思いついたものがあった。 「ついでだからさ、キラ。浴衣とかどう?」 「浴衣? いいね、アスラン結構似合いそう」 無邪気に言われて――わざとだろうか、天然だろうか――なんとも言えなくなってしまった。 女物とか似合うだろうと思ったのはキラに言うと怒られるだろうから秘密にするのがいいだろう。 一回着てみてほしいとは、ひそかな野望となったけれど。 |
おまけ3 「だけどキラも成長したな」 「何が?」 「昔はよくブルーハワイとか食べてたのに、今じゃ宇治金時」 「何? ふけたとか言いたいわけ? 可愛げがなくなったとか?」 「そんなこと言ってないだろ」 「…………言ってる」 「言ってないから」 |
おまけ4 宇治金時を、というよりもカキ氷を幸せそうに食べるキラを見て、ふと珍しい衝動がおきた。 「キラ」 「何?」 「夏祭りに行こうか」 キラのさらさらの髪を軽くひっぱった。 返されたのは驚いた顔。 「……珍しいね、アスランから誘うなんて。夏祭りなんて僕の専売特許みたいなもんだったのに」 「なんとなく、ね。思い出して」 「何を?」 これもまた、昔のこと。 「行かない?」 「まあ断る理由もないけどね。そうだね、花火が見たいな」 「で、キラはまた一番最初にカキ氷を食べる、と」 いつもそうだった。 「もちろんだよ」 赤とか黄色とか緑とか青の、毒々しい色の。 昔身体に悪そうだなあと思いつつ眺めていたのを覚えている。 本当に可愛くない子供だった。 その分キラが年よりも幼くみえていたから、なるほど結構つりあいはとれていたのかもしれない。 「やっぱり宇治金時よりブルーハワイ?」 からかい半分に言えば、むかしでは考えられなかった答えが返ってきた。 「あのチープな味がいいんだよ。祭りって感じがするからね」 やっぱり成長してるらしい。 …………考え方だけは。 要はやっぱり好きだってことだろう。 そんなことを考えていたのを見透かされてしまったのか、少し不満そうにアスランを見たキラは、しかし次に悪戯っぽく笑った。 「アスランは今年ブルーハワイに挑戦ね。僕が祭りとはなんたるかをしっかりと教えてあげるよ」 「…………勘弁してくれ」 あのキラ曰くのチープな味は、最初はまだしも最後になると甘すぎて、好きになれないというのに。 わかってて言っているから、さっきからかった――つもりはなかったが――仕返しなんだろう。 「あと綿菓子とりんご飴でしょ。クレープも外せないかな。あとバナナチョコ?」 共通点は、甘ったるい。 嫌がらせ以外の何者でもない。 しかもそれ全部食べようというのか。 考えるだけで胸ヤケをおこしそうだ。 「金魚すくいして、ヨーヨーとって。それから射的ははずせないよね」 けれど、楽しそうに話すキラに、やはり結論はまあいいかになるのだ――末期だ。 (一言) |