アスキラなロミジュリ その2


ラクス「みなさまがたがぞろぞろとお帰りになってゆく中、最後まで残ったのはザラ卿夫妻とトールでしたが、彼らもやがてその場を離れました。残されたのは騒ぎのあとの、乾いた沈黙のみ」



レノア「で、私の出番なのよね?」
アスラン「は、母上っ!?」
レノア「久しぶりね、アスラン」
アスラン「あ、お久しぶりです……ではなくて! まさか、母上もご出演なさる、と?」
レノア「だって貴女の母親といえば私しかいないでしょう?」
アスラン「いえお芝居なのですから、そこらへんは拘らなくても」
キラ「アスラン……。きっと人数が足りないんだよ。そこらへんのこと考慮してあげて」
アスラン「だからってな、キラ。…………ああ、もう、いいよ」
キラ「人生諦めが肝心ってね」
アスラン「ただ気になるのは、父上はどうなさるのか」
キラ「だからパトリックさんでしょ」
レノア「私は誰が夫役でもいいと言ったんだけれどね、あの人がそんなことは許さんと言ったものだから」
キラ「嫉妬深いのは遺伝だったんだね」
アスラン「……みたいだね」


レノア「でも出番少ないのよね。残念ながら」


ラクス「ではそろそろ劇をお進めになってくださいな」
レノア「あら、ごめんなさい。そうね。では……。アスランはどこに行ったんです?」



ディアッカ「ここに」
イザーク「黙れ」


トール「…………………………え、あれ? 聞かれてんの俺?」
キラ「そう。トールは今朝アスランに会ったことになってんの」
トール「そうなの?」
キラ「そーなの」

トール「今朝見かけましたが、今どこにいるかは……」
レノア「今朝? どこで?」

トール「げっ、突っ込まれんの? そこ。キラぁ」
キラ「適当につくっちゃえば。あんま関係ないよ」
アスラン「………………そうだったか?」
イザーク「ふん、そんな脇役の役どころなどそう大したもののはずがない。間違えても軌道修正くらいいくらでもきくだろ」
トール「結構ひどいこと言われてない?」
ディアッカ「いいからさっさとやれよ」
アスラン「お前が言うなと俺でも言いたくなるような台詞だな」




トール「実は俺、あ、いや、私は、眠れなくて市内西部にある森を散歩してたんですが、そこにアスランが一人でいるのを見かけました。私は彼のほうに近づいていったんですけど、彼は私を見ると茂みに隠れてしまいまして」


キラ「駄目じゃん、アスラン、そんなことしたら」
アスラン「してないから。作り話だから」
イザーク「はん、貴様がそこまで臆病者だったとはな」
アスラン「だから俺が実際そうしたわけじゃないって。……わからないのか?」
イザーク「なっ! わかるに決まっているだろ! 馬鹿にしてるのか、貴様は」
アスラン「馬鹿にしてるのはそっちの」
ラクス「おやめ下さい」
アスラン&イザーク「「はい」」




トール「追いかけたんですけど、さすがにコーディネーターには追いつけませんね」
キラ「アスラン足速いもんね」
アスラン「真実味が帯びるようなことを言うなよ」


パトリック「あの馬鹿息子は一体何をしてるんだ。早朝にあやつが一人で泣いてる姿を見たものは何人もおる」
アスラン「なっ!?」
レノア「それは大変。あの子溜め込むタイプだから。爆発しちゃわなきゃいいんだけど」
カガリ「ああ、それはいえてるな。ハツカネズミタイプだからな、アスランは」
レノア「キラちゃん、悪いんだけど慰めにいってあげてくれないかしら?」


キラ「だってよ、アスラン」
アスラン「もう何も言う気になれないよ。キラが慰めてくれるのはうれしいけどね」
キラ「……あとでね」
アスラン「楽しみにしてるよ」





レノア「アスランったら昼間は昼間で部屋に閉じこもりっきりで」
パトリック「まったく何を考えているのやら」
トール「ご存知ないのですか」
パトリック「聞いても言わんのだ」
レノア「反抗期からしら」
トール「恋煩いとか」
レノア「あら、じゃあキラちゃんと二股? そんな甲斐性うちの息子にあったかしら」



アスラン「それは甲斐性ではなくてただの浮気でしょう。何を言ってるんですか」
キラ「ふぅ〜ん、そうなんだ」
アスラン「キラも、変に受け止めるな!」
キラ「二股かあ」
アスラン「だから、キラっ!」




ニコル「ま、閉じこもって機械いじってるっていうのが一番真実味がありますよね」
キラ「それもそれでどうかと思うけどね」
アスラン「きら〜」



ラクス「あれ? そこに丁度アスランが歩いてきますわ」

トール「あ、じゃあ聞いてきますよ。とりあえずお帰りください。うまく聞き出しますから」





トール「よお、アスラン」
アスラン「……ああ」
トール「機嫌最悪だなあ、振られた?」
アスラン「振られてない!」
トール「お、なんだじゃあ恋煩いで決定なんだ」
アスラン「(しまった)」
キラ「へ〜」
アスラン「って、キラの出番はここじゃないだろ!」

トール「なあ、相手誰だよ。ラクス? カガリ? ミリィとか言ったら許さないけどな。まさかフレイじゃないよなあ」
アスラン「俺が好きなのはキラだけだ」
キラ「アスラン駄目だよ。僕とはまだ出会ってない設定なんだから」
アスラン「お前……。真面目にやる気があるのかないのかどっちだよ」


トール「ま、人は恋をして成長するってね。相手にされてないってんなら諦めろよ。しつこい奴は嫌われるんだからな」
キラ「ずきずきするだろ」
アスラン「……なんでかな、胃が痛くなってきたよ」

トール「周りを見てみろって」
ディアッカ「綺麗なおねえちゃんがいっぱい」
イザーク「貴様はもうしゃべるなっ!」




キラ「浮気したらとりあえずお仕置きだからね?」
アスラン「キラが一番綺麗だよ」



ラクス「そこのバカップルは放置しまして、次の場面にうつりましょう。なんだか皆様とてもお楽しみのようですけど、この場面ばかりやっていても仕方ありませんわ。ではオーブ家のほうも見てみましょう。オーブ卿はあら、サイとお話中のようですわ」


キラ「サイがパリス? ああ、じゃあもう僕サイと結婚して終わろうかな」
アスラン「キラ……」
キラ「早く終わって早く帰れるよ?」
アスラン「……すごく複雑だけど、とりあえずやめて」


ラクス「ちなみにサイはヴェローナ公、つまりディアッカの甥にあたります」

ディアッカ「マジ?」
サイ「……わざわざ言われないほうがよかったかも」




サイ「ま、いいや。ディアッカも別にカズイと親戚っていわれたわけでもないんだし、我慢しろよ」
ニコル「なんだかすごい言われようですね」
キラ「まあ、気持ちはわからなない……」
トール「こともない?」
キラ「あはは」




ラクス「ではサイ、気合をいれてよろしくお願いいたしますね」
サイ「気合? なるほど
   お父さん、キラと結婚させてください!」
アスラン「だ、駄目だ!」
キラ「こら、君は僕の父親じゃないだろ」

フラガ「いやあ、ちょっとまだ早いだろ」

キラ「………………僕のお父さん」
フラガ「おう」
キラ「アスラン、君は本当の両親にやってもらえて、実は幸福だったのかもしれないよ」
アスラン「あ…………ああ」
フラガ「おいおいおいおい、なんだよ、その言い草は。せっかく真心こめて育ててやったっていうのに。お父さん悲しいなあ」
キラ「あーそーですか」





サイ「どうしても、キラと結婚したいのです。キラ以外考えられません。キラを愛してます」

キラ「はいはい、お芝居だからね、お芝居。抑えようよ、アスラン」


フラガ「そう言ってもなあ。あと二年は嫁にゃやられんな。ま、その間におとすことだ。そしたら認めてやるよ」
アスラン「認めない!」
フラガ「あ、そうそう。今日うちでパーティあるんだけどさ、こいよ。そんときちょっと話してみろよ」
サイ「は、はい。ありがとうございます」



フラガ「え〜っと、そこの…………。名前なんだっけ? あ、まあいいや。ちょっとこれ頼むわ」
カズイ「ぼ、僕?」

キラ「あ……、カズイいたんだ」
トール「気付かなかった」
ニコル「……いなかったんじゃないんですか?」
サイ「しかもフラガ少佐に名前覚えられてないんだな」




フラガ「そうそう、そこのお前。この紙にさあ、今日のパーティーの客人一覧書いといたから、探し出してて、来てねって可愛く言ってこいよ。おし、サイ、行こうぜ」
サイ「あ、はい」


カズイ「…………大変なことになった。字が…………読めない」

トール「嫌がらせ?」
キラ「カズイ少佐怒らせるようなことしたの?」
アスラン「いや、……あの人はもとから字が汚いよ。俺も読めなくて困った」





カズイ「な、なあ。それって結局読めた?」
アスラン「気合と根性でなんとか」
カズイ「これ、読んでくれない? 頼むよ」
アスラン「………」
キラ「うわあ、そんなに汚いんだ」
イザーク「ふん、そんなこともできないのか、無能者め」

アスラン「はあ」

サイ「……キラに頼めよ」
カズイ「ええ?」
サイ「ほら」
カズイ「き、キラ。お願いできない、かなあ。どうしても読めなくて」
キラ「………………あ〜〜〜、僕も無理かなあ、それは。ねえ、アスラン読んで? なんて書いてあるのか気になってきた、読めないから余計に」
アスラン「わかった」







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(一言)
突っ込みどころが多すぎてもはや何も言えず。やっぱりキラのお父さんはクルーゼ隊長にすべきだったか(何故)